「ポストに声を投げ入れて」インタビュー
2016年第一弾シングル「ポストに声を投げ入れて」は、映画『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z「ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ」』の主題歌として書き下ろしたミディアムナンバー。今作はYUKIがソロデビュー14年目に放つ30枚目のシングルだ。
「まず“ポケットモンスターの主題歌”というお題を考えると、ポケモンの映画は小さなお子さんたちがたくさん観に来られますし、YUKIを知らない方もいらっしゃるでしょうから、選曲の段階から気合が入りました」
“YUKIとポケモン”というこれまでになかった組み合わせだからこそ、「いろいろなことに挑戦できた」「新しい発見があった」と、YUKI。
「たとえばスタッフが選んだ曲の中に、自分だったら選ばないようなタイプの曲があっても、歌ってみることで自分はこういうことができるんだ、こういうものも好きなんだなという新しい発見がありました。それと同時に、自分が知らなかった世界に触れてみても、自分の好きな世界は変わらないんだ、私の癖みたいなものは出てしまうものなんだなと思いましたね」
また、作詞においても「最初に一人称を“僕”にしようと決めました。私が“僕”と“君”で歌詞を書くのはとても珍しいことですね。あと、花、虹、仲直りなど、子どもたちにもイメージしやすい言葉を選んで歌詞を書いています」と、様々な試みをしている。
ところで、映画『ポケモン・ザ・ムービーXY&Z「ボルケニオンと機巧(からくり)のマギアナ」』に描かれた物語は、“ソウルハート”も重要なテーマになっている。
「心と心が繋がっている仲間という関係性や、友達の存在を思い出す時、私はいつも地元・函館で過ごした中学時代が蘇ってくるんですね。そして、ソウルハートというワードから、私はある一人の友達のことを思いました。その友達は東京へ引越しをして遠く離れてしまったけれど、毎日のように手紙を書いていたので、私たちはいつも繋がっていたんです。“YUKI、元気?”って、いつも書いてくれる彼女の手紙に、彼女は東京でどんな毎日を過ごしているんだろうと想像したり、一緒にいられない寂しさを覚えたりもしましたね。この歌詞は“僕”と“君”で書いているけれど、あの頃の私と彼女の関係も入っています。絆や仲間のことを、これだけストレートに歌詞にしたのは多分初めてだと思います」
ちなみに、タイトルや歌詞にある“ポスト”は、YUKIの中では街で見かける赤いポストや家の郵便受けとは違うものらしい。
「例えて言うなら耳でしょうか。耳に声を投げ入れるとか、耳に歌を届けるというイメージです。瞼にその子がいるところが住所みたいに浮かんできて、目をつぶって歌うと、その子のところまで歌が届くような。私の中では脳内ポスト的なイメージなんです」
「ポストに声を投げ入れて」のミュージックビデオは、初顔合わせの牧野惇監督が手がけた。
「時間をかけて、自分で世界を作り上げていくクリエイターさんなので、どんな映像を作ってくださるのかとても興味がありました。私が歯車を廻し、世界をひとつに結び付けていくというアイデアは牧野監督が提案してくださいました。「ポストに声を投げ入れて」の曲の前後に、カタカタカタ…という音が小さく入っているんですけど、あれは糸巻きを廻している音です。映画のタイトルにある“機巧(からくり)”と、ミュージックビデオで私がからくりの糸巻きを廻しているシーンがリンクしています」
カップリングに選んだ「僕のモンスター」は、YUKI曰く「私の思春期ソング」。
「思春期の頃の私は、自分の体のどこからか生まれてくる衝動に追いついていくことができずに、いつも苛立っていました。どうやってもそれを止めることができないし、あふれ出てきてしまうそれはまさにモンスターでした。自分を持て余していたあの頃を振り返って書ける青春というのがあるなと思いました。今回は2曲とも歌詞の中に学生時代の自分がいるせいか、温度感や匂いが似ていますね」
シングルと同時発売されるライブDVD&Blu-rayは、昨年行った約4年ぶりのアリーナツアー「YUKI LIVE dance in a circle’15」の最終日、日本武道館公演を収録。2014年10月から2015年11月までの約1年間で3本のツアー(「Flyin’ High」「Dope Out」「dance in a circle」)を行い、57本ものライブをひとつひとつ積み重ねてきたその集大成とも言えるステージだと言えるだろう。
「ファイナルの日本武道館公演は、私の歌唱も自由度がどんどん増して、楽しさの方が凌駕していましたね。自分の思う通りに歌えて、自分の思うと通りに動けたので、生きてるって楽しいなと思いました(笑)。ライブはその瞬間に感じたことも見たものも、すぐに過去のものになってしまうけれど、ライブをパッケージすることで、あの日がまた輝いてくれたら嬉しいです」